完成までひと月以上!あぶくま地域のソウルフード「凍み餅」の世界に迫る

旅行に行ったらお土産はどこで買いますか? 新幹線の駅構内や空港にあるお土産屋さんも便利ですが、そこでしか買えない土地のモノが置いてある場所といえば、やっぱり「道の駅」じゃないでしょうか。

福島県内の道の駅は33か所。2018年2月現在、この数は岩手県と並んで全国7位らしいです。面積では3位なので若干比例してませんが、「道の駅」密度は全国でも高い方かと思います。付近の農家さんが持ち込む農産物の直売コーナーがあったり、地元の作り手さんによる加工品や工芸品なども並んでいたり、県内在住者にとっても道の駅めぐりは楽しいものです。

引用元:https://www.michieki.jp/pref/fukushima/

その道の駅などで、中通り地方を中心に毎冬2月頃から並び始めるのがこちらの食べ物。「凍み餅(しみもち)」というお餅です。

工場生産のものから、近所のおかあさんたちが昔ながらの手作りをしているものまで、形や大きさは様々ですが、触ってみるとどれもカチカチ。ただ乾燥させただけでなく、名前の通り「凍らせて」つくる保存食です。いかにも郷土食らしいルックスで、日持ちもよさそうだし、お土産に買っていこうかなーと思う方もいらっしゃるでしょう。

これ、食べ方わかりますか?

普通のヨモギ餅みたいに焼く?急いでるときはちょっと濡らしてチンする……? いえ、ちょっと待ってください。ほとんどの場合、「食べ方」を書いたものが同封されてます。餅の大きさや気温などにもよりますが、たいていは数時間から一晩、まず水に浸さないといけないんです。

なんだ時間かかるなぁ、ちょっと面倒かも……と感じた方。ですよねー。筆者も初めて買ってみたときはそう思っちゃいました。でも、この凍み餅がどれほどの手間暇をかけて作られるものかを知ったら、きっと食べ方も変わってきますよ!

 

あの緑色はヨモギではない!?

さて、偉そうに言いましたが、実は筆者もこのたび凍み餅づくり体験イベントに参加するまで、その製造プロセスをちゃんと知らなかったんです。

 

「凍み餅」自体は、福島だけに伝わる特別なものではなく、冬の寒さが厳しい東北や信州を中心に
広く作られてきました(場所によっては「氷餅」とも言うそうです)。でも、気温は似ていても雪の量や湿度、風の強さなど、その場所の気候風土によって見た目も作り方もかなり違うんです。同じ福島県内でも、筆者のテリトリーあぶくま地域と会津地方とでは全然違いますし、もちろん食べ方もいろいろ。ホントの「郷土食」と言えます。

ちなみに、あぶくま地域というのは福島県の東半分の大部分を占める阿武隈高地一帯のこと。今回体験した凍み餅の作り方は、その南部に位置する古殿町(ふるどのまち)のコメ農家で、コメ加工品の製造・販売もしている「ふるさと工房おざわふぁ~む」小澤さんの直伝です。材料はうるち米、もち米に、ツナギとして「オヤマボクチ」という草の葉を混ぜ込みます。

 

そう、ヨモギではなく「オヤマボクチ」。通称「ごんぼっぱ」(だけどゴボウの葉とは別物)。凍み餅を大量生産するところではヨモギを使う場合も多いそうですが、このあたりでは山に自生している「オヤマボクチ」がオリジナルなんですね(でも今では自然のものが減ってしまったので栽培ものがメインだとか)。これ、ヨモギの10倍も繊維質が多いんですって!実際、葉を天日干ししたものを手で揉んでみると、乾燥しているのに全くパラパラにならず、繊維でしっかりまとまっています。

 

では、その後の製造工程を並べてみましょう。まず、手で揉んだオヤマボクチを重曹とともに3時間ほど煮てアクをとり、うるち粉と混ぜて団子にしたものをモチ米といっしょに蒸しあげます。次は臼で搗いて餅にし、一晩ねかせて切り分け、紙に包んで紐で縛って数時間水にさらした後、雨が当たらない場所に吊して待つこと約1ヶ月。

 

その間、お餅は寒風に晒されながら凍ったり解けたりを繰り返し、あのカチカチの保存食ができあがります。ね、手間暇かかっているでしょう?農作業ができない冬の間、農家さんはみなこういう仕事をしてたんですね。

 

「焼く」だけじゃない、こんなおいしい凍み餅料理も

そんな正真正銘のスローフード「凍み餅」ですから、食べるときも気持ちに余裕をもって、冬なら一晩浸水しておきましょうね。浸水さえしておけば、その後の調理は意外に手早くできます。

ジモティの皆さんは、油をひいたフライパンで焼いて砂糖醤油、というのが定番のようですが、小澤さんはじゅうねん(エゴマ)のタレをかけてました。これもおいしい!

 

でも、バターLOVEの筆者としては、バターで焦がして醤油を垂らすのがいちばん好き (^^) 。

 

今回小澤さんには、さらにそのアレンジバージョン「凍み餅ステーキ」を作っていただきました。

フライパンで凍み餅を焼き、火が通ったらバターをたっぷり(最初から入れると焦げるので注意)。そこへ「みりん6酒6醤油1」の割合で混ぜたタレをじゅわーと流し込む。さらに小口切りのネギをたっぷり入れてソースにし、アツアツの凍み餅ステーキにかけて出来上がり。じゃーん!

 

餅の食感は、しっとりずっしりもっちり。一般の白餅のようにやたらびよーんと伸びたりせず、食べ応えがあります。もちろんアツアツがおいしいですが、時間がたっても不思議と硬くならず、少し冷めても十分おいしくいただけます。

もうひとつ、小さく切った凍み餅をホットケーキミックスに絡めて油で揚げた「ドーナツ風凍み餅ボール」も作ってもらいました。

 

あ、これの大きいやつは食べたことあるぞ。そう、福島人気の揚げ菓子「凍み天」です!福島TRIPでも以前に紹介されていますので、ぜひどうぞ。

 

他にもある、あぶくまのソウルフード、凍みものの数々

降雪量はさほど多くないものの、厳しい冷えと強い風に晒され、乾燥した冬が特徴の阿武隈高地。そこには、凍み餅をはじめとした「凍みもの」文化が根付いています。こちらは「凍み大根」。↓

 

切り干し大根なら首都圏のスーパーでもお馴染みと思いますが、「凍み大根」はまるごと1本を(もしくはタテ二等分して)干したもの。こちらも、皮をていねいに剥き、穴をあけて紐を通し、数時間水に晒した後、1ヶ月ほど凍みさせ乾燥させて完成するスローフード。食べるとき一晩浸水するのも凍み餅と同じですね。ふっくら煮物にすれば、大根の甘さが引き立ちます。

 

冬場は農家さんの軒下に吊るしてありますし(実は我が家のベランダにも!w)、道の駅や産直などでも見かけます。

 

大根とお料理の写真は、福島市のふくしま女性農業生活文化研究所さんによる凍み大根づくりのイベントで撮らせていただきました。

そしてこちらは凍み豆腐。↓

 

高野豆腐と言えばわかる方も多いでしょうか。高野山のものと製法が全く同じかどうかわかりませんが、こちらも豆腐を凍結→乾燥させて作ります。もっとも、普通の木綿豆腐ではダメで、専用の硬めの豆腐が必要。昔は近所の豆腐屋さんで専用豆腐を作ってもらって干していたんだけど、という農家さんはいますが、いまでは工場で作られたものがほとんどのようです。

 

まとめ

いかがでしょうか。福島の旅のお土産に寒冷地のソウルフードともいえる「凍みもの」。各地で少しずつ違う「凍み餅」を買って、違った料理法で食べ比べてみるのも面白いかもしれません。なかでも、あぶくま地域の「オヤマボクチ」を使い、屋外で凍みさせ乾燥させる昔ながらの「凍み餅」、道の駅や産直には2月下旬頃から並び始めますので、ぜひ手に取ってみてくださいね。

なお、凍みものづくり体験は県内いくつかの団体が実施しています。今回取材させていただいた古殿町のおざわふぁ~むさん、福島市のふくしま女性農業生活文化研究所さんでも、不定期にイベントが開催されています。詳しくはFBページからお問合せを。

ふるさと工房おざわふぁ~む(古殿町)

ふくしま女性農業生活文化研究所(福島市)