一度食べれば病みつき?いわき流カツオ刺身の食べ方とは

今年も、初鰹の季節がやってきた! 福島県の太平洋側に位置するいわき市の小名浜港に5月13日、待ちに待った今年最初のカツオの水揚げがあったのです。解凍もののカツオを侘びしく食べる暗黒時代(や、解凍も充分美味しいし贅沢なのだけれどね)は、とうとう終わりを告げたのでした。

全国的にはタタキの方がメジャーらしい?のですが、いわきでカツオと言えばやはり生で刺身!が主役です。もちろんタタキも素晴らしい文化。私も大好物です!

しかし、小名浜などを中心としたいわきでのカツオの食べ方は、単に美味しいという以上に、嗜好品の要素が強く…中毒性があり……さながら、イケナイお薬のよう。語彙力を疑われる言い回しで恐縮ですが、色んな意味で、「ヤバイ」の一言に集約される食べ物です。

 

いわき流カツオ刺身の食べ方

と言っても、いわきでの主流のカツオ刺身の食べ方は、特別複雑な調理法を取る訳ではなく至って単純。すりおろしニンニクと醤油を合わせる。薄切りとか刻みとかではなく、大根おろしのようにニンニクをすりおろす。たったそれだけなのです。拍子抜けしたかも知れませんね。

 

ただしここで大切なのは、頭がおかしいと思われかねない程に、たっぷりの生ニンニクをすりおろして合わせることにあります。カツオの刺身は、むしろニンニクを味わうための皿。そのくらいの気概で、たっぷり。

もちろん、初心者はニンニク控え目からスタートですが、慣れてくるとこのニンニクの量がだんだん増え、止まらなくなり……。

そう。これは、世の中に増えてきた激辛マニアとか、パクチーマニアなんかと似ているのです。

病み付きになって止まらない人が続出。

次第に増えていくニンニクの量に思わずすりおろす手が震えそうになりますが、躊躇ってはいけません。(とは言え、刺激が大変強いので個人の体質や体調に合わせて、無理のない範囲でお楽しみください)

 

ニンニクの強烈なニオイと、脂がのった最高のカツオの強烈な旨みを口の中でぶつける。どちらも屈強なツワモノどもを、自分の口の中でプロレスラー同士がぶつかるように正面衝突させる。

ここで、ぶつける片方が弱くてはいけません。こういうのは、双方が譲らぬ高レベルでの激戦でなければ面白くないのです。

ニンニクは出来る限り大柄で味の強いものが必要だし、合わせるカツオは鮮度が落ちたり脂スカスカの大根鰹では役不足。プリップリの脂が鈍く輝く最高のカツオを新鮮なまま、生命力溢れるニンニクへとフルスイングでぶつけるべし!

目も眩む程にはじけ飛ぶ旨味、香り、ニオイ、辛さ、ニオイ、旨味。そして、旨味に次ぐ旨味。圧倒的なボリューム感。

舌や唇はニンニクの刺激でビリビリと痺れ、顔から汗がふきだし、頭のネジが軽く飛んだみたいにクラクラしてきたところに、気付け薬代わりに、これまた強烈に辛口の日本酒で喉の奥まで洗い流すのです。ビールでも良し。これぞまさにOssanの至福、たしなみ。

女子力?そんなものは知りません。

 

せっかくなので、福島の日本酒をご一緒にどうぞ♪

合わせる日本酒は強烈な辛口…とは書いたものの、実は最初から最後までとにかく辛ければ良いという訳でもなく。というのも、洗い流した口の中や喉の奥がビリビリしたままでは、次の一口が進みにくいのです。

カツオとニンニクの強烈なぶつかり合いを再び受け止められる力を速やかに取り戻すために、これらを腹の中まで一気に洗い流せるような強い辛口を持ちつつも、去り際には口の中を優しくリセットしてくれるような後味が欲しい。無茶ぶりのようですが、せっかくの名勝負を泥試合にしないためには、いわば優秀なレフェリーと整備されたリングの存在も欠かせません。

これを満たす酒は色々ありますが、せっかくなので福島県内のお酒を合わせていきましょう。福島の酒は県内各地域ごとに同じ県内とは思えないほど異なる味の多様さが特徴で、それゆえに色んなジャンルの料理に合わせられます。

その上、福島の酒は強弱の違いこそあれそれぞれ「ふくみ」とも言うべき、ベールのように滑らかな香気のオーラを纏っている酒が多く、これが実に心地良いのです。

そんな中で今回のカツオに合わせる酒は、必ずしも高級志向である必要はありません。食前酒のようなフルーティな吟醸系よりもむしろ、精米歩合が高すぎない本醸造や純米酒などの食中酒の中からお好みに合わせて、主張しすぎず食材を引き立てる、やや辛口志向のものを選ぶのがベストだと思います。

合わせる銘柄のオススメは、私の場合たとえば白河の「千駒」「白陽」「陣屋」や矢祭の「南郷」など県南の酒を推します。福島県内きっての辛口志向が強い地域のお酒です。

また、地元いわきの「からくち又兵衛」や、猪苗代の「稲川本醸造辛口地酒蔵」「磐梯町の栄川辛口」なども非常に合います。

 

後味にもう少し優しさを強くするなら、会津美里町の「風が吹く」など。すっきりとしていながらも強い旨味が、カツオとニンニクとのぶつかり合いをしっかりとフォローしてくれるはず。醤油は少しコクが強いシッカリしたものを合わせると、ニオイの強さに負けません。白河の根太醤油や、伊達市の玉鈴醤油などが良いでしょうか。

 

お刺身が食べ切れなかったら揚げ浸しに

しかし、お刺身は日持ちしないから余ったら大変だし、子供には刺激が強すぎるから食べさせられないし、カツオは味の当たり外れがあるからもし失敗したら…とご心配のみなさま。ご安心下さい。食べきれなかった刺身を使った美味しい料理も含めての、いわきのカツオ文化です。

いわきには「揚げ浸し(あげびたし)」(または焼き浸しとも言う)と言う、素揚げや片栗粉まぶし揚げにしたカツオを、各家庭ごとのレシピで生姜やニンニクなどと醤油を合わせた調味液に漬け込んで次の日のおかずやお子様のおやつ、晩酌のアテに回される料理があり、これもまた絶品!なのです。思わず揚げ浸し目当てにカツオを買いたくなってしまうほど。

 

もしお刺身を余らせてしまったり運悪く脂スカスカの大根鰹を掴んでしまったときには、にっこり笑顔で揚げ浸しに致しましょう。

 

まとめ

カツオは全国で沢山食べられている馴染みの食材。それだけに、全国それぞれの地域で独自の食文化が発達しています。食材の魅力は、そういうバラエティがあってこそ一際輝くというもの。

中でもこのいわきのカツオの愉しみ方は震災をきっかけに広く知られはじめ、ジャンk…もといファンになる方が続出しています。

ぜひこの夏は、いわきのカツオ文化に悶絶してみてはいかがでしょうか。